【歌ってみた】JASRAC・NexTone管理楽曲を使う場合は、権利処理が必要!

歌い手・VTuber・配信者などの活動者にとって、既存の楽曲を歌唱して投稿する「歌ってみた」動画は、極めて重要なコンテンツです。
しかし、他者が創作した音楽作品を自身の動画に利用して公開する行為は、法的な権利処理を適切に行わない限り、「著作権」侵害に該当するリスクを有しています。
この記事では、「JASRAC」(一般社団法人日本音楽著作権協会)と「株式会社NexTone」が管理する楽曲を対象に、その法的仕組み、プラットフォームごとの取扱いの差異、そして個人契約における具体的な手続や費用負担の実態について、専門的知見から解説をします。
1 権利処理の必要性
1ー1 JASRAC/NexTone管理楽曲とは
本記事では、JASRAC/NexToneが管理している楽曲のことを「管理楽曲」といいます。
より正確に言うと、「管理楽曲」とは、作詞家・作曲家又は音楽出版社などの著作権者(著作権を有している人)から依頼を受けて、楽曲(歌詞・メロディなど)の著作権をJASRAC/NexToneが管理している楽曲を指します。
(JASRAC/NexToneは、管理している楽曲をデータベース化し、第三者が演奏・放送・録音・配信などの形で利用する際の手続き・使用料の徴収を一元的に行っています。)
しかし、この世のありとあらゆる全ての楽曲がJASRAC/NexToneの管理下にあるわけではありません。
また、管理状況は楽曲ごとに異なり、同じ楽曲であっても、歌詞・メロディの権利とで別々の団体に分かれて管理されている場合や、一部の利用方法(動画配信・イベントでの使用など)のみが管理対象から除外されているケースも存在します。
楽曲がJASRAC/NexToneに管理されているか否かを調査するためには、以下の検索サービスで検索をすることが必要です。
- JASRAC管理楽曲の確認:同社が提供する「J-WID」を利用することで、各楽曲の管理対象の区分や著作者情報を検索できます。
- NexTone管理楽曲の確認:同社が提供する「作品データベース検索サービス」を用いることで、同社が管理をしている作品であるかを検索できます。
そして、利用したい楽曲の管理状況により、「歌ってみた」などで用いるために求められる権利処理の方法は、以下の通り二分されます。
- JASRAC/NexToneの管理楽曲である場合:
それぞれの管理団体が定める規程に従い、所定の利用許諾申請を行うことで、適法な利用が可能となります。 - 管理団体に委託されていない楽曲(管理外楽曲)である場合:
当該楽曲の著作権を保有している著作権者(作詞家・作曲家などのクリエイター本人の場合や、事務所所属の場合は当該事務所等)から、個別に許諾を得る必要があります。
ただし、個人クリエイターやボカロPなどの中には、創作活動を推奨する目的で「二次創作ガイドライン」や「利用規約」を公式ウェブサイト等に公開している事例が多々見られます。
この場合、投稿者には個別の交渉に代えて、当該ガイドラインに記載された条件(非営利目的での利用、特定のクレジット表記、替え歌の制限など)を遵守した上で利用することができる場合が一般的です。
1-2 YouTubeやTikTokで管理楽曲の権利処理が不必要な理由
YouTube、TikTok、ニコニコ動画やInstagramなどの主要な動画投稿プラットフォームにおいて「歌ってみた」動画を投稿する際、個人が管理団体に直接利用許諾を申請したり、使用料を直接支払ったりする必要は原則としてありません。
これは、各プラットフォームの運営事業者が、JASRACやNexTone等の管理団体との間で、サービス全体の利用をカバーする「包括的利用許諾契約」(包括契約)をあらかじめ締結しているためです。
しかし、この包括契約による申請等の免除は、あくまで「契約が締結されているプラットフォーム上での利用」に限定される点に注意が必要です。
・JASRACと包括契約を締結しているサービス:
https://www.jasrac.or.jp/information/topics/20/ugc.html
・NexToneと包括契約を締結しているサービス
https://www.nex-tone.co.jp/files/ugc.pdf
逆説的に言えば、包括契約を締結していないプラットフォームやSNSを利用して「歌ってみた」動画を配信・投稿する場合には、活動者自身が権利処理を行わなければなりません。
その代表的な例として、Twitter(現「X」)が挙げられます。
Twitterは、動画をツイートすることが可能ですが、JASRAC/NexToneとの間で、包括契約を締結していません。
したがって、Twitterにおいて、管理楽曲を使用した「歌ってみた」動画を投稿する行為は、適切な権利処理手続きを行わない限り、歌詞・メロディに関する著作権を侵害する違法な権利侵害行為と判断される可能性があります。
1-3 Twitterなどの包括契約をしていないサービスで楽曲を用いる方法
包括契約が締結されていないTwitterなどのプラットフォームにおいて、「歌ってみた」動画を適法に投稿するためには、以下の通りの楽曲の管理種別に応じた手続を講じなければいけません。
- 管理楽曲を利用する場合:
活動者が、JASRAC/NexToneに対して「インタラクティブ配信等の利用許諾申請」を行い、事前に承認を得る(=個人契約を締結する)必要があります。
その際、JASRAC/NexToneへの利用申請は原則として「URL単位(アカウント単位)」となるため、動画を投稿するTwitterのアカウントごとに、利用許諾申請をそれぞれ行っていただく必要があります。(=例えば、本垢とサブ垢で投稿する場合は、2つの利用許諾申請が必要です。)
- 管理楽曲以外を利用する場合:
まず、楽曲の権利者が「二次創作ガイドライン」や「利用規約」を公開していないかを調べてください。二次創作ガイドライン等を公開している場合は、そのルールに沿った形で利用します。もし、そうした二次創作ガイドライン等が公表されていない場合には、著作権者に対して直接、ウェブサイトのお問い合わせフォームや、SNSのDMなどの適切な窓口を通じて連絡をとり、個別の利用許諾を得る必要があります。
2 個人契約ってできるの?いくら?
2-1 JASRAC/NexToneって個人契約できるの?
結論から言うと、個人の活動者であっても、JASRACやNexToneとの間で、自分のTwitterアカウントやウェブサイトで楽曲を投稿するために必要な「インタラクティブ配信等の利用許諾申請」を個人名義で締結することは可能です!
しかし、契約締結に向けた実務手続は複雑であり、専門的な知識が必要になります。
具体的には、JASRACでは、以下のプロセスで個人契約が可能です。
- J-TAKTにおける申請:「J-TAKT」と呼ばれるJASRACの申請サービスを用いて、Twitterアカウントやウェブサイトに関する情報を提出します。この申請フォームの入力には、専門的な知識が必要です。
- 基本契約書類の郵送:プラットフォームや管理団体から提供される紙の契約書をプリントアウトし、捺印のうえ郵送で取り交わす。
- サービス概要書の提出:動画をアップロードする予定のアカウントの詳細、対象サイトの構造、具体的な楽曲の配信・利用方法が把握できる資料(企画書など)を提出し、審査を受ける。
- 利用実績の定期報告:契約締結後、再生回数や利用曲目、サイト上で発生した収入(発生した場合)などを定められたデータ形式で集計し、定期的に報告する。
このように、JASRAC・NexToneとの契約は高い専門性が必要となり、独力で不備なく遂行するには一定のハードルが存在するのが実情です。
Uta-Portaでは、有料会員向けに、画像を交えて、JASRAC・NexToneとの契約に関する解説を予定しています。
また、スタンダートプラン(月2,500円)以上であれば、不安に思うことに関して、専門的知見を有しているスタッフに「こういう入力で良いか?」という事前質問をチャットですることが可能です。
(特定の個別具体的な法的問題に対する判断・解決策のご提案などの「法律鑑定」・「法律相談」に該当する部分は除きます。)
是非とも、この機会に、プラン加入をご検討ください!
2-2 JASRACの使用料規程と金額
まず、JASRACにおける「商用配信」・「非商用配信」と「情報・広告料等収入あり」・「情報・広告料収入等なし」の違いをお伝えします。
JASRACの規程では、「商用配信」とは、情報・広告料等収入を得て行う配信/収入の有無にかかわらず営利を目的とする者が行う配信をいうとされています(JASRAC「著作物使用料規程」105頁参照)。
つまり、活動者がYouTubeなどで収益化しており、活動で収益を得ている場合であって、その活動名義のTwitterアカウントで投稿する場合は、原則「商用配信」に該当します。
逆に、配信活動をしているが、収益を一切得ていない場合は、「非商用配信」とされるのが一般的です。
次に「情報・広告料等収入」ですが、厳密には、①「情報料」と②「広告料等」に分かれます。
①「情報料」というのは、投稿の対価として、受信者が支払わなければならない料金を指します。例えば、動画を有料販売する場合などがこれに該当します。
次に、②「広告料等」ですが、情報料以外に投稿によって得られる収益を指します。例えば、投稿にスポンサーがついている場合や、Twitterで広告収益をONにしている場合などが該当します(いずれも、JASRAC「著作物使用料規程」106頁参照)。
つまり、活動者がTwitterなどの個人契約するサービスで収益化をONにしている場合や、個人契約するサービスで有料販売する場合には、原則「情報・広告料等収入あり」に該当します。
逆に、Twitterなどの個人契約するサービスで収益化をONにしていない場合や、個人契約するサービスで有料販売しない場合は、「情報・広告料等収入なし」と整理されるのが一般的です。
そのうえで、JASRACとの間で個人活動者が「情報・広告料等収入なし」・「ストリーム配信」(Twitterの場合)の契約を締結する場合の使用料については、以下の通りです。
- 商用配信の場合(曲数無制限・包括契約):
年契約:一律、年額50,000円(1年未満の場合は月額一律5,000円)
※商用配信の場合は、単発契約がありません - 非商用配信の場合
- 「同時送信可能化曲数」:
アカウント上に投稿されている管理楽曲の曲数上限のことです。過去の累計ではなく、今アカウント上に何曲投稿されているかで数えます。
例えば、古い投稿を消して新しい投稿をすれば1曲のままですが、消さずに毎月1曲投稿し続けると、1年後には12曲分になります。1つの動画に2曲含まれる場合は、2曲として数えます。 - 同時送信可能化曲数が10曲未満の場合(単発契約):
- 月契約:1曲あたり150円(ただし、最大でも月額1,000円)
- 年契約:1曲あたり1,200円(ただし、最大でも年額10,000円)
- 同時送信可能化曲数が10曲以上の場合(曲数無制限・包括契約)
- 月契約:一律、月額1,000円
- 年契約:一律、年額10,000円
- 「同時送信可能化曲数」:
2-3 NexToneの使用料規程と金額
NexToneとの間で個人活動者が「情報・広告料等収入なし」・「ストリーム配信」(Twitterの場合)の契約を締結する場合の使用料については、以下の通りです。
- 作品数課金方式:100円 × 利用作品数 (ただし、最大でも月額1,500円)
- 利用割合課金方式:月額5,000円 × 著作物利用比率
※「著作物利用比率」とは、申請するアカウントにおいて投稿された全音楽動画(管理楽曲に限らず音楽全て)の総再生回数に占める、NexTone管理楽曲を使用した動画の再生回数の割合です。
→仮に投稿している音楽(管理楽曲に限らず音楽全て)を用いた動画の全てがNexTone管理楽曲である場合、利用比率は100%となるため、MAXでも月額5,000円(年間単純計算で60,000円)です。
作品数課金方式か、利用割合課金方式か、どちらが適用されるかはNexToneの判断によりますので、申請時に確認をしましょう!
2-4 JASRAC/NexToneとでの使用料規程の対比
以下の表は、JASRAC/NexToneとの個人契約において、「情報・広告料等収入なし」・「ストリーム配信」(Twitterの場合)の契約を締結する場合の使用料規程について対比したものです。
| 区分 | 料金の計算基準 | パターンA | パターンB | 特徴・備考 |
| JASRAC (非商用配信) | 送信可能化曲数(※)で決まる (※)アカウント上に投稿されている管理楽曲の曲数の上限 | 【10曲未満】 (単発契約) 月額: 1曲あたり150円 (最大1,000円) 年額: 1曲あたり1,200円 (最大10,000円) | 【10曲以上】 (曲数無制限) 月額: 一律1,000円 年額: 一律10,000円 | 1年単位の「年契約」と、1か月単位の「月契約」の2種類があります(年契約は3〜4割お得)。 |
| JASRAC (商用配信) | 曲数無制限の包括契約のみ | ー | 年額: 一律 50,000円 (1年未満の場合は月額一律5,000円) | 商用配信の場合は、包括契約のみです。 |
| NexTone (商用/非商用問わず) | 利用する作品数又は再生回数の割合で決まる | 100円 × 利用作品数(上限:月額1,500円) | 月額5,000円 × 著作物利用比率(上限:月額5,000円) | どちらのパターンが適用されるかは、NexToneの判断によります。 |
3 最後に
「歌ってみた」は、活動者にとって自己の歌唱力や個性をアピールし、ファンを楽しませるために極めて重要なコンテンツの1つです。
また、存在する素晴らしい楽曲を自分なりに表現して、インターネット上の創作文化を活性化させる素晴らしい側面を持っています。
しかし、活動者自身が、情熱とクリエイティビティを発揮して新しい二次創作を生み出しようとするからこそ、その土台となった原曲をゼロから生み出し、世に送り出した「作詞・作曲家と、その努力」に対しても、最大限の敬意を払うべきであると考えます。
「権利処理」を行うことは、単にアカウントBANや著作権法違反による損害賠償請求・場合によっては刑事罰といったペナルティを回避するためだけのものではありません。
自分が心を動かされた創作物を創り上げたクリエイターに対して、「著作権使用料」という正当な対価を分配するための、誠実な手段であると考えています。
JASRAC/NexToneとの個人契約や、複雑な権利関係の整理は、一見すると煩雑で実務的な負担が大きい作業のように感じられるかもしれません。
しかし、法人の支援がない個人の活動者であっても手順を正しく理解すれば、スムーズに手続を完結させることが可能です。
Uta-Portaでは、皆様が日々の活動に全力で取り組めるように、事務作業を極力スムーズに処理できることを心より祈っており、そのために必要な各種情報提供・支援を行うことができればと考えております。
もし、この記事が参考になったのであれば、是非ともご共有をお願いいたします!
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また、スタンダートプラン(月2,500円)以上であれば、不安に思うことに関して、専門的知見を有しているスタッフに「こういう入力で良いか?」という事前質問をチャットですることが可能です。
(特定の個別具体的な法的問題に対する判断・解決策のご提案などの「法律鑑定」・「法律相談」に該当する部分は除きます。)
是非とも、この機会に、プラン加入をご検討ください!
